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2011年02月06日

科学誌サイエンス 2010年 4月 16日


並行作業を行う脳は分担して成し遂げる
Multitasking Brains Divide and Conquer


ヒトがふたつのことを同時にしようとするとき、右脳と左脳はそれぞれのことに対して別々に働くと考えられることがフランスの研究者によって報告された。この観察結果は、一般に同時にふたつのことは適度にできるが、それ以上になるとできない理由を説明するうえで有用である。Sylvain CharronとEtienne Koechlinは機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、文字合わせの課題(letter-matching task)を解く被験者の脳の活動を観察した。被験者が課題を1種のみ行ったときは、右脳左脳とも背側前帯状皮質と運動前野皮質の活性が認められた。しかし、同時に2種の課題を行ったときは、左脳の側前帯状皮質と運動前野皮質の活動はひとつめの課題に、右脳はふたつめの課題に反応していた。この右脳と左脳による役割分担は「人間の意思決定や推論能力にみられるいくつかの制限を解明する可能性がある」と著者らは述べている。

"Divided Representation of Concurrent Goals in the Human Frontal Lobes," by S. Charron at Institut National de la Sante et de le Recherche Medicale in Paris, France; S. Charron at Ecole Polytechnique in Palaiseau, France; E. Koechlin at Ecole Normale Superieure in Paris, France; E. Koechlin at CENIR in Paris, France; E. Koechlin at Universite Pierre et Marie Curie in Paris, France.


最古の火星隕石の年代はもっと若かった
Younger Age for Oldest Martian Meteorite


研究者らの報告によると、現在知られている中では最古の火星起源の隕石ALH 84001は、従来の推定年代より約5億年は若いと考えられ、それゆえにおそらく火星の原始地殻の破片ではないという。推定年代約45.1億年前とされてきたALH 84001は、初期マグマオーシャンの固化の時期に形成され、約42.5億〜41億年前にわたる重爆撃期を乗り越えた火星の原始地殻の破片であると考えられてきた。Thomas LapenらはLu-Hf同位体データを用いてALH 84001の結晶化年代を約40.9億年前と改めた。改められたこの年代は―それでもなおこの種の隕石の中では最も古いのではあるが―ALH 84001が爆撃期のちょうど終わりに形成された地殻の破片であるということを示唆している。これに加えて、火星ではマグマからの地殻形成がその歴史の大半を通して継続していたこと、および、ALH 84001が火星のコアにおけるダイナモ効果とそれによる惑星磁場が消滅する直前に形成されたことを示している。

"A Younger Age for ALH 84001 and Its Geochemical Link to Shergottite Sources in Mars," by T.J. Lapen; M. Righter; A.D. Brandon at University of Houston in Houston, TX; A.D. Brandon; A.H. Peslier at NASA Johnson Space Center in Houston, TX; V. Debaille at Universite Libre de Bruxelles in Brussels, Belgium; B.L. Beard at University of Wisconsin in Madison, WI; B.L. Beard at NASA Astrobiology Institute in Madison, WI; J.T. Shafer; A.H. Peslier at Jacobs Technology, Engineering and Science Contract Group in Houston, TX; J.T. Shafer at Lunar and Planetary Institute in Houston, TX.


地球の核の偏った成長
Lopsided Growth at the Earth's Core

なぜ地球の核は非対称で形が崩れているのか?この疑問は、科学者にとって長年にわたって未解明であったが、2つの新しい研究では、地球の核は100万年以上にわたって形作られてきた、という地球力学過程に焦点を当てた。Marc Monnereauらが、さまざまな大きさの鉄の粒子を計算に用い、100万種類もの異なる核の成長モデルを計算した結果、地球の中心にある固体の核は、外核の鉄のゆっくりとした固体化で膨張したことを確認した。彼らは、固体の中心核から液体の外核へ分子の移動があると説明するモデルを見出し、いかに鉄の粒子の撹拌が、鉄の永続する結晶化を核の一方向へ導き、別の方向へは、鉄の継続的な融解物を導くかを実証している。このモデルでは、今日我々が見聞きしている不均衡な核を生成するために、鉄の分子の地下深くへのゆっくりとした移動が、どのように東半球の融解域と西半球の固体域を導きうるかを正確に示した。 その過程は現在進行中であるため、この研究は、比較的若い地球の内核の理論を支持している。別の研究では、Arwen Deussらが、1976年から2009年の間に発生した90の大きな地震の記録から、地球の核の地震学的活動を調べ直した。彼らのデータは、東西半球の傾斜性に加えて、核の特別な地域的変動を特定した。さらに、研究者らは地球の核で発見した変化のパターンは、地球の磁場の形に直接調和しており、そのことは、地球の磁場が形成されて以降、核の成長は、磁場と連結していると述べている。

"Lopsided Growth of Earth's Inner Core," by M. Monnereau; M. Calvet; A. Souriau at Université de Toulouse in Toulouse, France; M. Monnereau; M. Calvet; A. Souriau at Observatoire Midi-Pyrénées in Toulouse, France; M. Monnereau; M. Calvet; A. Souriau at CNRS in Toulouse, France; L. Margerin at CEREGE in Aix-en-Provence, France; L. Margerin at Université Paul Cézanne Aix-Marseille 3 in Aix-en-Provence, France; L. Margerin at CNRS in Aix-en-Provence, France.


修飾DNAの進化の道を追跡する
Tracing the Evolutionary Path of Modified DNA

今回新たに行われた研究から、DNAを変化させる外からの影響は、陸生動植物の進化の過程で有利に働いていることが示唆された。このDNAの化学的修飾あるいはメチル化によって、細胞は同じ遺伝物質を持っているにもかかわらず、性質や機能が異なるようになる。今回の発見で、DNAそのものの中にはコード化されていないがゲノムに影響を与える外部要因、つまりエピジェネティクスの役割について、さらに理解を進めることができる。DNAメチル化パターンは、遺伝子のスイッチがオン・オフするあらゆる現象スペード花の鮮やかな彩色からがん性腫瘍の成長までスペードに関わっている。環境的要因もまた後成的変化を促進して将来の世代に影響を与える可能性がある。例えば、妊婦が喫煙するかしないかは、胎児に後成的変化を起こす原因となる。 Assaf Zemachらは、DNAのメチル化パターンやメチル基を検出する配列決定法を用いて、植物5種、菌類5種、動物7種のゲノムについてDNAメチル化を分析した。その結果、有性生殖し広範囲にDNAメチル化がみられる陸生動植物とは異なり、無性生殖する単細胞動物や菌類では、DNAメチル化が全くといっていいほど認められないことがわかった。DNAメチル化は進化の歴史では非常に古いが、突然変異の確率も増加させる。このため生物の中ではDNAメチル化の消失がかなり多くみられ、菌類では進化の初期、動植物ではもっと後になって起っている。しかし今回の研究から、陸生動植物のゲノムではまだメチル基があちこちに多数残存していることが明らかになり、有性生殖するもっと複雑な生物においてDNAメチル化は、突然変異の危険性があるにも関わらずまだ重要であることが示唆された。

"Genome-Wide Evolutionary Analysis of Eukaryotic DNA Methylation," by A. Zemach; I.E. McDaniel; P. Silva; D. Zilberman at University of California, Berkeley in Berkeley, CA.


Translational Medicine 4月14日号: 糖尿病の管理:あなたの人工膵臓が実現する
Controlling Diabetes: Meet Your Artificial Pancreas

体内の血糖バランスを保つためのコンピュータアルゴリズムを活用した人工膵臓が、I型糖尿病患者のより優れた疾患管理に役立つ可能性がある。同装置は、最終的には、十分装用できる大きさの人工膵臓システムに装備されたコンピュータチップで作動するようになり、現在世界中で糖尿病と共に生きている約2億8千5百万人の治療に革命をもたらすかもしれない。I型糖尿病では、体内の血糖値を厳密に制御するための十分な量のインスリン(血糖降下ホルモン)の産生や、十分な量のグルカゴン(血糖上昇ホルモン)の分泌が肝臓で行われない。現在のところ、患者が健康を保つための唯一の手段は、血糖値の一時的な低下や急激な上昇を防ぐために、微妙な血糖バランスを人工的に維持することである。そのためには、日夜の頻繁な自己血糖測定とインスリン注射に加え、厳格な食事制限と運動が必要である。生活習慣に気を配っていても、患者の血糖が危険域まで低下する場合があり、この状態は低血糖として知られている。 以前の人工膵臓を開発する試みは、インスリンの供給だけに焦点を当てていたために、低血糖を防ぐことができなかった。今回Firas El-Khatibらは、必要に応じてインスリンとグルカゴンの両方を供給できる、正常な膵臓を厳密に模した人工膵臓を開発した。この「膵臓」は、持続血糖モニター、各ホルモンを皮下注入する2つのポンプ、および常にこの2つのポンプ同士を「相談」させて患者が必要とするインスリンまたはグルカゴンの量を算出するコンピュータプログラムを実行するラップトップで構成されている。研究者らは、この人工膵臓を用いて、研究参加者全員における低血糖を伴わない血糖コントロールに成功した。同研究では低血糖も認められなかった。ラップトップの代わりに小型チップでコンピュータプログラムを実行できる、さらに小型の人工膵臓に関する試験が現在進行中である。関連するPerspective記事では、正常血糖値の維持という糖尿病の最大の目標を達成するためのこの新たな技術やその他のアプローチ法に関連するベネフィットと課題について考察している。

"A Bihormonal Closed-Loop Artificial Pancreas for Type 1 Diabetes," by F.H. El-Khatib; E.R. Damiano at Boston University in Boston, MA; S.J. Russell; D.M. Nathan; R.G. Sutherlin at Massachusetts General Hospital in Boston, MA; S.J. Russell; D.M. Nathan; R.G. Sutherlin at Harvard Medical School in Boston, MA.



posted by gensou-choumazin at 05:00| Comment(0) | 科学誌サイエンス ハイライト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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