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2011年02月13日

科学誌サイエンス 2010年 4月 23日


HIV患者がサルモネラ菌に感染しやすい理由
Why HIV Patients Are So Susceptible to Salmonella

アフリカの成人HIV患者における機能不全の免疫反応が、何故ある種のサルモネラ菌感染に対して無力であるのか。その答えが明らかになった。この発見は、日和見病原菌によるHIV患者の死亡率が高い理由の一因となろう。また将来、サルモネラ菌感染にも有効な効果の高いHIVワクチンの開発にもつながって行くであろう。Calman MacLennanらは当初、HIV患者ではサルモネラ菌特異性抗体を作るのが困難ではないかと予測していたが、結果はこれとは全く反対であった。つまり、HIV感染者では、細胞壁のリポ多糖(LPS)タンパク質に対して特異的に抗体濃度が上昇したのである(健常な免疫反応を持つ患者では、抗体は外膜タンパク質特異的に作用するため、サルモネラ菌を死滅させて感染を除去することができる)。また、HIV感染血清でもLPSを欠損したサルモネラ菌株を死滅させることができ、さらにHIV感染血清からLPS特異性抗体を除去するとサルモネラ菌に対する血清効果が再び回復することも明らかになった。この発見から、HIVは細胞性免疫異常を誘導するだけでなく、分泌型抗体を介する液性免疫も機能がかなり悪化しLPSタンパク質を標的にすることが示唆された。このように低下した免疫反応は、HIV感染者が他の二次感染に直面した場合に深刻な結果を引き起こすことになる。そこで今後は、サルモネラ菌のLPSではなく、外膜を標的とするワクチンの開発を著者らは勧めている。Perspective記事の中で、この一連の発見とその意味について、Susan MoirとAnthony Fauciが詳しく述べている。

"Dysregulated Humoral Immunity to Nontyphoidal Salmonella in HIV-Infected African Adults," by C.A. MacLennan; J.J. Gilchrist; A.F. Cunningham; M. Cobbold; M. Goodall; J.L. Marshall; E.N. Gondwe; S. Bobat; M.T. Drayson; I.C.M. MacLennan at Medical Research Council Centre for Immune Regulation and Clinical Immunology Service in Birmingham, UK; C.A. MacLennan; J.J. Gilchrist; A.F. Cunningham; M. Cobbold; M. Goodall; D.L. Leyton; J.L. Marshall; E.N. Gondwe; S. Bobat; I.R. Henderson; M.T. Drayson; I.C.M. MacLennan at University of Birmingham in Birmingham, UK; C.A. MacLennan; J.J. Gilchrist; M.A. Gordon; J.J.G. van Oosterhout; C.L. Msefula; W.L. Mandala; E.N. Gondwe; E.E. Zijlstra; M.E. Molyneux at College of Medicine, University of Malawi in Blantyre, Malawi; C.A. MacLennan; M.A. Gordon; C.L. Msefula; W.L. Mandala; E.N. Gondwe; M.E. Molyneux at University of Liverpool in Liverpool, UK; J.J. Gilchrist at Oxford University in Oxford, UK; J.J. Gilchrist at John Radcliffe Hospital in Oxford, UK; R.A. Kingsley; G. Dougan at Wellcome Trust Sanger Institute in Cambridge, UK; C. López-Macías at Mexican Institute for Social Security in Mexico City, Mexico; C. López-Macías at Specialties Hospital, National Medical Centre "Siglo XXI" in Mexico City, Mexico; R. Doffinger at Addenbrooke’s Hospital in Cambridge, UK.


アジアモンスーンの予測
Predicting the Asian Monsoon


世界で最も有力な反復する気候システムとして知られるアジアモンスーンは、ほぼ間違いなく、地球人口の半分以上に影響を与えるが、長期の気候データがないことで、その本来の性質を知ることに限りがある。今、研究者らが、300以上の異なる場所から得られた樹木の年輪データを測定することで、アジア全域のモンスーンの多様性に関する700年という長期間の記録を示した。Edward Cookらは、それらの詳細な研究をモンスーンアジア干ばつ地図(MADA:Monsoon Asia Drought Atlas)と呼ぶ。過去および将来におけるモンスーンの多様性をよりよく理解するための、別の関連性のある記録と比較されうると述べている。それらの復元は、過去2,000年の間の3つの重要な気候イベントに相当する、Medieval気候アノマリーの後期、小氷河期および人為起源の気候変動が起こっている現在を含んでいる。MADAはまた、アジアモンスーンが長い間機能しなくなる期間も記録しており、人間を苦しめる深刻な大規模干ばつを記録している。これは、1,300年からの地球上におけるアジアモンスーンの「足あと」を明らかにし、将来、モンスーン性降雨をともなう海水面温度のパターンを比較したり、世界中の気候モデルの改良に用いられる可能性がある。Perspective記事で、Eugene WahlとCarrie Morrillは、MADAから推測される内容についてより詳細に述べている。

Asian Monsoon Failure and Megadrought During the Last Millennium," by E.R. Cook; K.J. Anchukaitis; B.M. Buckley; R.D. D’Arrigo; G.C. Jacoby; W.E. Wright at Lamont-Doherty Earth Observatory of Columbia University in Palisades, NY; W.E. Wright at National Taiwan University in Taipei, Taiwan.


双生児研究 ―― 教師が重要な影響力を持つ
Twin Study ―― Teachers Do Matter


新しい研究によると、子供の生まれ持った読書力に磨きをかけるのは、優れた指導であるという。一方で、指導力に欠ける教師のクラスでは、遺伝による大きな能力の違いを考慮しても、子供たちの読書力は一様に低い。読書力に対する影響が大きいのは遺伝か、もしくは環境かという問題はこれまでにもさまざまな議論を呼んできた。Jeanette Taylorらは今回、フロリダ州の小学校で一卵性および二卵性双生児を対象に音読の流暢さのテストによって読書力を表わし、分析を行った。遺伝子が 50%もしくは100%共通する双生児の成績を比較することで、音読テストの成績差がどの程度遺伝的要因によるものであるか、また、双生児に共通する環境的要因や子供ごとに異なる環境的要因によるものであるかを推測した。教師の質の尺度には双生児のクラスメートの一年間における能力の伸びを使用した。その結果、遺伝子の相違に起因するテストの成績差は指導力のある教師のクラスの方が指導力のない教師のクラスよりも大きいことが判明した。したがって、子供が生まれ持っている読書力を伸ばせるか抑制してしまうかといった形で、指導の質は遺伝子や環境と影響し合っていると考えられる。

"Teacher Quality Moderates the Genetic Effects on Early Reading," by J. Taylor; A.D. Roehrig; B. Soden Hensler; C.M. Connor; C. Schatschneider at Florida State University in Tallahassee, FL; C.M. Connor; C. Schatschneider at Florida Center for Reading Research in Tallahassee, FL.


勢いを増すマイクロキャパシタ
Fast and Furious Microcapacitors

小型キャパシタ(エネルギーの蓄積・放出を短時間で行う装置)のパワー密度を向上させることによって、微小な電子装置を連続充電する方法が発見されたという。本技術の用途としては、危険な化学薬品を検出するセンサーや、人体内に埋め込む医療機器、移動する対象を追跡するための無線IDタグなどが考えられる。キャパシタは反対の電荷をもつ2つの導体間にある電場にエネルギーを蓄える。高速で充放電ができるので、電池と組み合わせれば電力回収に威力を発揮し、ハイブリッド車の回生ブレーキなどに使用される。しかしキャパシタは容量が非常に小さいので、これまでマイクロバッテリーには対抗できなかった。今回John Chmiolaらは、モノリシック炭素薄膜を用いて2枚の導体板間に電荷を蓄えれば、スーパーキャパシタ(従来のキャパシタよりはるかに薄型で、より多くのエネルギーを蓄積できる)のパワー密度を大幅に向上できることを示した。驚いたことに、炭素薄膜の小さな孔は電解質を輸送するのに十分な大きさがある。炭素薄膜は現行の半導体製造と共通の加工技術で作製できるため、マイクロスーパーキャパシタは、小型化できる可能性のある様々な装置内の電子機器に組み込むことができる。

"Monolithic Carbide-Derived Carbon Films for Micro-Supercapacitors," by J. Chmiola; Y. Gogotsi at Drexel University in Philadelphia, PA; C. Largeot; P.-L. Taberna; P. Simon at Université de Toulouse in Toulouse, France; C. Largeot; P.-L. Taberna; P. Simon at CNRS in Toulouse, France; J. Chmiola at Lawrence Berkeley National Laboratory in Berkeley, CA.


Translational Medicine 4月21日号: 迅速な脊髄の回復
Speedy Spinal Cord Recovery

Sur1というタンパク質が脊髄損傷の後遺症の悪化に深く関与していることが発見された。この発見は、障害が一生残り(脊髄損傷患者の約半数が下半身不随)、入院やリハビリに高額な費用がかかることの多い脊髄損傷に対して、新たな治療の道を拓くものである。脊椎への急激な外傷性衝撃により骨折または椎骨変位が生じ、軸索(脳と身体をつなぐ脊髄でシグナルを上下行させる神経細胞の突起)が損傷される。脊髄では重度の負傷後、組織や細胞の損傷から保護しようとする作用が働くが、その意図に反してさらなる損傷を引き起こしてしまう。Sur1タンパク質は、負傷後に Abcc8遺伝子によって活性化され、過剰なカルシウムの流入によって細胞が死滅するのを阻止する防御メカニズムに関与する。Sur1はナトリウムを運搬してカルシウムに混入させることで、細胞内に流入するカルシウム量の減少をもたらす。しかし、重度の損傷の場合はこの防御メカニズムがうまく機能せず、 Sur1タンパク質が過度に働くため、ナトリウムが調節されずに細胞内に流入して細胞の破壊や死滅をきたす。 Marc Simardらは、脊髄損傷後のヒト、マウス、ラットから採取した脊髄組織を検討し、Sur1が関与する細胞死や組織破壊の同様のメカニズムが3種ともに認められることを明らかにした。Simardらは、Sur1タンパク質をコードするAbcc8遺伝子を抑制することによって、脊髄損傷マウスの細胞死や組織破壊の過程を阻止し、長期回復を改善した。さらにラットでは、オリゴデオキシヌクレオチド(遺伝子に付着して一時的にその活性を阻害する特殊な1本鎖 DNA)によるAbcc8遺伝子の短期間の抑制が、脊髄損傷後の損傷を大幅に低減させることがわかった。この研究から、脊髄損傷後、できるだけ速やかにオリゴデオキシヌクレオチドによる治療を行ってAbcc8遺伝子を抑制することで、脊髄損傷後の全般的な組織破壊が抑えられ長期回復が改善される可能性が示された。

"Brief Suppression of Abcc8 Prevents Autodestruction of Spinal Cord After Trauma," by J.M. Simard; S.K. Woo; C. Tosun; Z. Chen; S. Ivanova; O. Tsymbalyuk; V. Gerzanich at University of Maryland School of Medicine in Baltimore, MD; M.D. Norenberg at University of Miami School of Medicine in Miami, FL; J. Bryan at Pacific Northwest Diabetes Research Institute in Seattle, WA; D. Landsman at Christopher and Dana Reeve Foundation in Short Hills, NJ.




posted by gensou-choumazin at 10:25| Comment(0) | 科学誌サイエンス ハイライト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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