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2011年02月13日

科学誌サイエンス 2010年 4月 30日


跳ねるカエル:両生類として初めて解読されたゲノムから得られる多くのヒント
Leaping Frogs: Clues Revealed in First Amphibian Genome

今回、両生類ゲノムとして初めて塩基配列が解明されたニシツメガエル(Xenopus tropicalis; アフリカツメガエルXenopus laevisの近縁種)のゲノムを分析したところ、ヒトゲノムと驚くほど共通する部分のあることがわかった。遺伝疾患に関与するヒトの全遺伝子のほぼ80 パーセントがニシツメガエルと一致したのである。今回の発見から、様々なヒト疾患の分子メカニズムを研究解明するためカエルモデルを開発することができる、と考えられる。また今回の研究から、何故世界のカエル種は急速に減少し続けているのか、その謎を解く手かがりを見つけることも可能かもしれない。ニシツメガエルは、ヒトゲノムとほぼ同数のタンパク質コード遺伝子をゲノムに含んでいるため、研究室で最も研究されているカエル種のひとつになっており、胚発生や細胞生物学の研究でモデル動物として広く使用されている。 Uffe Hellstenらは、ニシツメガエルのゲノムの構造を詳しく調べて、遺伝子がヒトおよびニワトリのゲノム内にほぼ同じ順列で配列されている領域(シンテニー領域と呼ばれる保存された領域)を発見し分析した。これら共通する領域は、基本的には遥か3億6000万年前の古いゲノムの断片である。つまり全ての哺乳類、鳥類、カエル、サンショウウオ、恐竜などかつてこの地上を徘徊していた全ての生き物に共通する最も古い先祖のものである。またカエルなどの両生類は環境有害物質や生息地の変化から絶えず攻撃を受けている状態であり、環境や食物の中の汚染物質に極めて敏感であることから、歩哨生物とみなされている。ゲノム法を用いて環境変化に対するカエルの反応を調べれば、カエル種の多様性を保存するのに役立つであろう。

"The Genome of the Western Clawed Frog Xenopus tropicalis," by U. Hellsten at Department of Energy Joint Genome Institute in Walnut Creek, CA, and colleagues. Please see the manuscript for a complete list of authors and affiliations.


生物多様性への期待が崩壊
The Broken Biodiversity Promise

2002年、世界的なリーダーが生物多様性に関する会議のために集まり、2010年までに、世界中の生物多様性損失率を軽減すると約束した。しかしながら、その会議のある枠組みを用いた新たな分析によると、このゴールにはまだ至っておらず、地球の生物多様性に直面した圧力が増加しつづけていることが示された。Stuart Butchartらは、種の数、個体数、森林破壊率および世界で進行中の保護努力などを含んだ31の特別な指標を集めた。研究者らは、1970年から 2005年まで間の地球規模のデータからなるこれらの指標を評価し、何年にもわたって減少していることが示された生物多様性の指標を見つけ出した。一方で、地球規模の生物多様性に関する圧力の指標は増加している。保護地域を中心とした、世界のある地域では、いくつかの成功例があるにも関わらず、 Butchartらは、生物多様性の減少率が近年低下しているという指標を見つけることができなかった。彼らは、世界の生物種に関する圧力の増加が、不十分な反応と相まって、「生物多様性保全条約」は2010年までの目標に達しないと運命づけられていると述べている。世界政府が地球の生物種の保全に真剣であるならば、研究者らは、不利益な政策を逆転し、生物多様性を土地活用法に組み込み、さらに、生物多様性に真正面から取り組む政策に対する財源を増やすことが、唯一現実的にとるべき手段であると論じている。

"Global Biodiversity: Indicators of Recent Declines," by S.H.M. Butchart at United Nations Environment Programme World Conservation Monitoring Centre and Birdlife International in Cambridge, UK, and colleagues. Please see the manuscript for a complete list of authors and affiliations.


細菌のバイオフィルムは自滅の元をつくる
Bacterial Biofilms Make the Seeds of Their Own Undoing

浴室のぬめり、歯垢、医療機器表面や病院の壁面に形成される皮膜 ―― どれも、洗浄や抗菌処理を行っても消滅しない細菌叢、細菌のバイオフィルムである。新たな研究から、Bacillus subtilisという細菌の少なくとも1種は、バイオフィルム形成を阻害する特定のアミノ酸の産生し、既存のバイオフィルムの分解を誘発することがわかった。バイオフィルムが古くなると、栄養分の供給が低下し老廃物が蓄積されて細胞が浮遊しやすくなる。Ilana Kolodkin-Galらは、B. subtilisが古くなった細菌叢から特殊なアミノ酸、D-アミノ酸を分泌することを発見した。著者らによれば、D-アミノ酸は複数の細菌によって産生され、バイオフィルム分解の引き金になっていると考えられる。著者らは、このアミノ酸が抗菌剤として医療や産業の現場で有用である可能性を示唆している。

"D-Amino Acids Trigger Biofilm Disassembly," by I. Kolodkin-Gal; R. Losick at Harvard University in Cambridge, MA; D. Romero; S. Cao; J. Clardy; R. Kolter at Harvard Medical School in Boston, MA.


協調の鍵を握るコミュニケーション
Communication as the Key to Cooperation


経済学者と社会科学者は100年以上にわたって、経済人(ホモ・エコノミクス:Homo economicus)という言葉を用いて人間を自己利益のみに従って行動する合理的生物であると評してきた。しかし私たち人間は、相互尊重の意識を持たない存在にはなりきれていない。今回、実験的研究および理論的研究の2つの研究によって、人と人とのコミュニケーションと組織性は共に人間の協調的努力にとって必要不可欠であることが証明されている。これらの研究はまた、人間集団の進化過程において罰という行為が徐々に浮上してきた経緯の解明にも役立つと思われる。集団行動では、その集団全体により大きな利益をもたらす行為と個人的な利益をもたらす行為の間で葛藤が生じることが多々ある。過去の行動学的研究によると、協調は集団内の大半のメンバーが貢献しない限り崩壊する可能性があり、多くの場合フリーライダーは協調を維持するために罰せられる。しかし、罰は集団メンバーにとって代償が大きすぎて益にならない場合があるという研究もある。そこでMarco Janssenらはこれらの複雑な人間関係をさらに詳しく調査するために、実験的な環境たとえば森林や漁場で被験者らが協同して資源管理しなければならないゲームを実施した。その結果、フリーライダーへの罰は、被験者集団全体によって組織化されていない場合もしくは集団メンバーが承認していない場合、実際には逆効果になり得ることを確認した。この研究によって、集団メンバー間のコミュニケーションは利益拡大に向けた資源管理の鍵であるとともに、集団内の協調を維持するための罰の実施の鍵でもあることが判明した。もう一つの論文では、Robert Boydらが昔からの人間集団における組織的な罰のモデルを提示し、Janssenによる実験的研究の結論を支持している。Boydらの理論的モデルは、フリーライダーを罰することで生じる代償は罰する側の人数の増加によって軽減可能であることを示している。言い換えると、フリーラーダーに対する罰は集団メンバーで組織化されているのであれば集団全体にとって益になるが、集団メンバーが個々に与える罰が集団全体の益になることはまずない。 Perspective記事ではLouise Puttermanがこれらの研究結果とそれらの関連について詳しく説明している。

"Lab Experiments for the Study of Social-Ecological Systems," by M.A. Janssen; A. Lee; E. Ostrom at Arizona State University in Tempe, AZ; R. Holahan; E. Ostrom at Indiana University in Bloomington, IN.


Translational Medicine 4月28日号: 骨折に対する治癒力の強化
Broken Bones get Healing Boost


生化学的にマウスの骨折の治癒を速める手法が発見されたことが、新たな研究により報告された。同手法を、毎年骨折により入院する数百万例の患者に対する再生医療において、骨移植の増強から修復の促進までの広範な目的に適用できる可能性がある。ヒトとマウスでは、正常な骨再生と受傷後の治癒にWntタンパク質が必要である。Steven Minearらは、Wntタンパク質が、新たな骨の形成を担う骨幹細胞を活性化させることによって、その作用を発揮していることを発見した。同研究者らは、遺伝子改変マウスにおいてこの生来の修復過程を促進することにより、骨治癒を速めることに成功した。Wntシグナル伝達を遺伝的に促進したところ、正常マウスに比べ、損傷部の骨幹細胞が急速に分裂し、迅速に骨形成細胞に成熟した。次に、非遺伝子改変マウスにおいて同様の効果を発揮する、リポソーム化 Wnt3aと呼ばれる物質を作製した。マウスにリポソーム化Wnt3aを注入したところ、遺伝子改変マウスでみられたのと同様に、骨幹細胞の盛んな分裂と迅速な成熟が刺激され、骨修復過程が促進された。しかしこの作用は一時的なものであり、損傷部位に限定的に認められた。Wntシグナル伝達が制御されない状態では、過剰な骨形成などの有害な副作用を引き起こす可能性があるため、この点は重要である。同研究者らは、皮膚損傷、脳卒中、心臓発作後の組織再生の向上を目指して、類似するWntタンパク質を用いるアプローチ法について検討する予定である。

"Wnt Proteins Promote Bone Regeneration," by S. Minear; Y.A. Zeng; C. Fuerer; R. Nusse at Howard Hughes Medical Institute in Stanford, CA; S. Minear; P. Leucht; J. Jiang; B. Liu; Y.A. Zeng; C. Fuerer; R. Nusse; J.A. Helms at Stanford University School of Medicine in Stanford, CA.




posted by gensou-choumazin at 10:29| Comment(0) | 科学誌サイエンス ハイライト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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