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2018年07月05日

世界初の「遺伝子改変アリ」で、その複雑な昆虫社会の進化を解き明かす(米研究)






世界初の「遺伝子改変アリ」で、その複雑な昆虫社会の進化を解き明かす(米研究)

”超個体”とも呼ばれるアリのコロニーは、アリ同士の協力の産物である。この複雑なアリ社会が嗅覚に大きく依存している仕組みを、世界初の遺伝子改変アリが解き明かしてくれた。


昆虫の織り成す社会的行動
 チャールズ・ダーウィンの時代から、生物学者は社会的行動の進化に並々ならぬ関心を抱いてきた。これまでになされたミツバチの研究からは、昆虫の社会性を作り出したと思われる遺伝子のヒントが得られている。

 しかしその遺伝子を阻害する方法がなかったために、実際にどのように機能しているのか調べることは難しかった。



クローナルレイダーアントの遺伝子改変に成功
 社会的昆虫の遺伝子を改変することは難しい。個体のゲノムを改変することはできるとしても、アリの卵は非常に敏感なうえ、働きアリがいなければ成長できない。そのために卵をきちんと孵化させ、成虫まで育てることができないのである。

 さらに社会的昆虫のライフサイクルが複雑なことが、調査が可能になるタイムフレームの中で十分な数の遺伝子改変個体を確保することを阻んでいる。



 そこでアメリカ、ロックフェラー大学の進化生物学者ダニエル・クロノーアー(Daniel Kronauer)氏はクローナルレイダーアント(clonal raider ant)に注目。

 この種はガッチリとした体格をしており、コロニー内に女王アリがいない。かわりに各々が無精卵を産み、クローンが誕生する。つまり、一度個体のゲノムを改変すれば、改変された個体が素早く増えるということだ。他の種ではできない実験をこのアリなら可能にしてくれる。



 これまでの2年以上にわたる研究から、既存の卵は成虫の産卵を防ぐ化学物質を発することが判明していた。これを利用すれば、アリを隔離して、産卵をコントロールし、必要な個体数を確保することができる。

 それでも遺伝子物質を注入する際に卵を傷つけないようにするコツを身につけるまでには1万回以上もの試行錯誤が行われた。さらに生まれたアリをコロニーに返して、成虫に面倒を見てもらえるようになるまでにも数か月かかっている。秘訣は幼虫を10匹のグループに混ぜることだという。

アリの嗅覚受容体は350個
 遺伝子編集技術CRIPRで阻害したのはorcoという遺伝子だ。これはアリの触覚の臭いを感じる神経細胞が働くうえで不可欠なタンパク質を作る。神経細胞はフェロモンを検出し、仲間や他の動物とのコミュニケーションを図るために利用されるものだ。

 実はアリの嗅覚受容体は350個と非常に多く(ミバエでは46個)、クロノーアー氏はその複雑な社会システムの秘密がこの嗅覚にあるのではないかと睨んでいた。

 遺伝子改変アリの行動と脳の解剖からは、嗅覚受容体が大きな役割を果たしていることが窺えた。通常、生まれたばかりのアリ(明るい色)は最初の数か月を仲間と一緒に身動きせずに過ごす。

 しかし遺伝子改変されたアリの場合はそわそわと、すぐさま周囲をうろうろし始める。また遺伝子改変アリは仲間のあとをつけることもしない。仲間のあとを辿ることはコロニーの一体性を維持し、協力するために必要な行動だ。



 長期的な問題も発生した。レイダーアントは通常2週間ごとに6つの卵を産む。しかし遺伝子改変アリは同期間で1つしか産まなかった。寿命も2、3か月と、通常の6〜8か月に比べて短い。

 さらに驚きの影響が見られたのは脳である。そこには各種の嗅覚受容体の神経終末が集まる糸球体という部位がある。ところが遺伝子改変アリにはこれが形成されていなかった。これはマウスにおいて同様の遺伝子を阻害したときに見られるのと同じ現象である。

 脳の発達状態を比較した本実験では、社会性動物の複雑な行動制御がどのように進化したのかについて知見を与えてくれるという。

posted by gensou-choumazin at 08:40| Comment(0) | 最新・面白科学記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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